こんな能力(ちから)なんていらなかった
葵に抱いていたキャラがどんどん変わってゆく。
最初は上品なお嬢様って感じだったのに。今では若干不思議ちゃん?て疑い始めてる。
「もう我慢ならなかったから、無理言って転校したの!そしたら少なくとも何回かは会えるでしょ?」
まさか同じクラスになれるなんて思ってなかったけど……。
そう呟いた葵を思い切り抱き締める。
「あー!もう!!」
「優羽!?」
「なんで葵はそんな可愛いかな!?」
ぎゅーと抱きしめると葵も抱きついてくる。
「優羽の方が可愛いよ……」
若干頬を染めるその姿にキュンとくる。
「もう大好き!葵に惚れちゃいそう!!」
「惚れていいよ!ていうか紫音から乗り換えてよ!!」
その一言に優羽の体がビシッと固まる。
「……どうしてそれを……は!天使様か!?」
「いや、そんぐらいは誰だって見てればわかるから……」
赤い頬の優羽と呆れた顔の葵。
目を見合わせて二人は心の底から笑い合う。
葵が本当に自分のことをいじめていたとしても、
あの夢の中の少女だったとしても、
別にもういいやと思えた。
例え、自分を苦しめる張本人だったとしても、
もう怒れないなぁとだけ思った。
それだけ葵が好きになってしまったんだからしょうがないやって思えた。
そんな二人を空から見ている姿があることには気付かずに、二人はずっと笑っていた————