こんな能力(ちから)なんていらなかった
——なんでかって?
寧ろこっちが聞きたい。
「見せなさい!」
唯斗は放置してあった紫音の携帯を掴む。
「ロックかかってるけど?」
「——俺を誰だと思ってんの?」
唯斗は不敵に笑うと一回で解除しやがった。
「……いつ盗み見たんだよ」
「秘密〜♪」
またパスワードを変えなければいけないことに、はぁと溜息をつく。
「葵のメールは、っと……」
唯斗は慣れた手つきで弄っていく。
そして、目的のものを見つけたのか一瞬ガン見した後、紫音の方を見た。
その目には哀れみが滲んでいる。
「これは確かにイラつくなぁ……」
唯斗が見たのは優羽の写真の数々。
観察日記のように毎日届くそれには必ずと言っていいほど男の姿がある。
例えば男二人と廊下を歩く優羽。
黒板の上の方に字を書こうとして、背伸びした為スカートの中が見えそうで見えない優羽(それをガン見する野郎共)。
保健室でネクタイを外して谷間を晒しながら寝ている優羽。