こんな能力(ちから)なんていらなかった
優羽は気付いていない。
自分がどれだけ見られているのかなんて。
だが、いい加減に自覚して欲しい。
優羽の容姿がどれだけ周りの目を集めるのかぐらいは。
邪魔な前髪を掻き上げた瞬間、携帯が手の中で震える。
葵からの返事だ。
「なんだって?」
「『当たり前でしょ』だと」
そしてそれとともに優羽の寝顔の写真が添付されていた。
教室で思い切り寝顔晒すなんて本当にバカ。
苛立ちを露わに携帯をポケットにしまったタイミングで唯斗が紫音の名前を呼ぶ。
「で、他にその皺の原因は?」
ツンとつつかれる。
ゾッ……——
なんで男にやられるとここまでおぞましく感じるのか——
「その顔やめてくんねぇか?俺はゲイでもバイでもないんだから」
「……鳥肌立つからやめろ」
やれやれと首を振る唯斗。
「どうせあの無自覚お姫様のことだろ?」
明らかに苛立たしげな顔をした紫音に唯斗は笑う。
見透かされているように感じるのは中々気分が悪い。
が、もう何十年来の友人であるこいつには今更な問題だ。
チラと窺うと唯斗はどうぞ、と顎をしゃくる。
殊更大袈裟に溜息をつくと、