こんな能力(ちから)なんていらなかった


「ふざけんな!!!」


 明らかな怒声に静まり返る店内。

 しかし、それでも唯斗は唯斗だった。ストローを加えるとズコーという音がなった。

 唯斗は顰めっ面で空になっていたプラスチック容器を脇に除けた。

 いつもは何も思わないその態度。

 だが、今日は、


腹が立って仕方なかった。


「……お前何言ったか分かってんのか?」


『鳥籠』


 その言葉は、禁句扱いのものだった。


 それがあの人に何をしたかなんて唯斗とて忘れるはずがない。

 忘れたなんてことはあってはならない。


「でも、お前はしたいと思ってんだろ?」

「思ってるわけないだろ!!」


 唯斗を睨みつけるも飄々と躱されてしまう。


「じゃあ、どう思ってるわけ?」

「……」


 言葉に詰まる。


「お前も本当は閉じ込めたいとか思ってんだろ?」

「違う!」

「何が違うんだよ、離れて見守りたいとか言ってるくせに、取られると思ったら焦って自爆?ははっ……すっげぇ独占欲」

「違う!!」


 机を殴った衝撃で、自分の飲み物が倒れる。
 その口から流れ出た茶色い液体は、広げてあった資料にゆっくりと染みていく。


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