こんな能力(ちから)なんていらなかった
なのにこう上手く乗せられてしまったのは、葵が入れ知恵をしていたからだ。
そして葵に入れ知恵したのは天使様。
端からこのシナリオは出来上がっていたのだろう。要は。
罰の悪さから鼻をかく。
「なんて送るかな……」
やっぱり、謝罪か?
紫音はポツリと呟いて踵を返す。
が、そうはいかなかった。
優羽の家の中からか細い悲鳴が聞こえてきたせいで。
振り返った紫音の耳にはさっきの悲鳴がこびりついていた。
どんなにか細く、小さくても、その悲鳴は紛れもなく優羽のもの。
そして、その悲鳴は紫音にあの忘れてしまいたい朝の情景を思い出させる。
自分達が
なんの罪も無かったあの少女に
しでかした大罪——
あの時の少女の叫びと
今の悲鳴が
重なって聞こえた。
「っ!」
紫音は躊躇なく門を開けると勝手に中に入る。
その時耳の奥でりーんと鈴の音がなった。だが気に留めてる余裕などなかった。