こんな能力(ちから)なんていらなかった



「そのまま、ずっと……」


 優羽の体からゆっくりと力が抜けていく。
 紫音は優羽の上半身を支えるように頭を自分の肩に乗せる。


「ずっと……抱き締めてて」

「分かってるよ」


 微笑むとすぅっと眠りに落ちる優羽。

 その身体をそっとベッドに寝かす。


 優しく、どこにもぶつけないように。


「…………ねぇ」


 布団をかけたところで、下から話しかけられた。
 先程の赤い髪の少女がそこにいた。歳は十歳くらい。


「突然お邪魔した無礼をお許しください」


 謝り一礼する。

 が、そんなのどうでもいいのと一蹴されてしまった。


「今日泊まって」

「……はい?」


 唐突にも程があるその申し出に紫音は困惑した表情を浮かべた。


「いや、それは……」

「勘違いしないでよ」



「これは、お願いしてるんじゃなくて命令」


 紫音はその女の子の言葉に目を見張る。


「今の顔を見るにもう大丈夫だと思うけど、念のため。また唸されてても私には何も出来ないから……」

「ですが、見ず知らずの男にそれは……優羽の貞操が奪われてもいいんですか?」


 その台詞を聞いた女の子は笑った。

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