こんな能力(ちから)なんていらなかった
「あんたがどこの誰であろうと、別にいいのよ。この門の結界を潜り抜けられたならね」
「……結界?」
「そう。優羽の気を許したモノじゃないとこの家の敷地には入れない」
だからあんたは別にいいの。流は怒るかもしんないけどね。
そう言われた。
「それにあんたは優羽の嫌がることは出来ないでしょ?」
「…………」
ズバズバと言い当てるその子供を、紫音は信じられないような物を見るような目で見た。
「お前只の化け猫じゃないだろ」
「あれ?気付いてたんだ?」
紫音は無言でその女の子を見つめる。
女の子はふふっと愛らしく笑うとそこで一回転してみせた。赤色の髪の毛がふわりと舞う。
「——私の名前は奈々。でもこれは優羽がつけてくれた名前。本当は他にあるんだけど知りたい?」
紫音が頷くとそれの口は楽しそうに笑った。
「私は火車、地獄への案内役。千歳家への恩を返すために使い魔になった化け猫よ」
「……だからさっきから子供に似つかわしくない迫力を感じるのか」
「そうよ?何千年も生きてればあんた達ぐらいなんて簡単に見通せる。あんたぐらいのヒヨッコならね」
「ヒヨッコ、だって?」
「うん。——例え前回の記憶を持っていたとしてもね」
意味深な奈々の言葉に紫音はふーん、と意地の悪そうな顔を見せる。