こんな能力(ちから)なんていらなかった
「中々興味深いことを言うな」
「興味深いどころか知りたくて仕方ないくせに」
口を押さえて笑う奈々。
奈々が笑うとシャンシャンと鈴の音が鳴る。
一頻り笑った奈々は振り返り紫音の目を見た。
「閻魔様も結構困ってるの。あんた達のせいでね」
「それは心外だな、それに俺は入ってないだろ?」
「……そうね」
奈々はおっさんくさい溜息をつくと、再び紫音の目を見る。
「というわけで」
と前置きした奈々様は、獲物を見つけたような顔で告げた。
「もし優羽を泣かせたら、あんたのこと食べてやるから」
奈々は満面の笑顔を浮かべている。
冗談なんて言ってない。
あれは本気の目だ。
というか。
何がというわけで、なのか。
全く繋がってない。
「……心得とくよ」
「そう?ならいいの」
奈々はスタスタとその部屋から出て行こうとして、ドアを閉める前に振り返った。
「布団他にないから優羽に添い寝してあげて」
「……それは」
まずいんじゃと声を上げるも、
「流はいつもそうやって寝るけどね」
あの男への対抗心から分かった。と答えてしまった俺は馬鹿だと思う。