こんな能力(ちから)なんていらなかった



「……ん」


 優羽は寝惚けたまま目を開ける。

 目覚ましはまだなっていない。


 止めよ……と手を伸ばそうとしてお腹に誰かの手があることに気が付いた。


流かな。

 と軽い気持ちでその手を外した。


 が、それはすぐに再び巻きついてくる。

 そして、その腕に絡め取られた優羽の身体はベッドに倒れこんだ。


 自分の上にいた人を見た優羽は絶句する。


 流とは程遠い若干癖のある茶色い髪。

 綺麗な顔。


 そこには、


「紫音!?」

「……」


 目を瞑ったままの紫音がいた。


「何で!?」

「うるさい……」


 叫んだら怒られた。


 そんなことをしているうちに、目覚ましが五時を告げる。

 すると目をパチリと開けた紫音がその目覚ましを止めた。


「なんで……紫音が?」


 しかも、制服のままだ。


 ネクタイだけがなくて、ワイシャツの隙間から胸元が少しだけ見えた。



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