こんな能力(ちから)なんていらなかった
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「お帰りー優羽!!」
玄関を開けた瞬間に飛びつかれる。
反応が早すぎる。
まさか見張ってたとでもいうのだろうか。
「ただいま奈々」
撫でろと言わんばかりに頭を出してくるので、靴を脱ぐ間もない。
喉の辺りを擽るように撫でるとゴロゴロと猫特有の音が聞こえてくる。
可愛い。……可愛いんだけど、このまま撫で続けると膝の上に居座られてしまうこと必至。なので、早々に抱き上げて床に下ろす。
頬を膨らまして一丁前に睨んでくる奈々。その迫力は子供のくせして凄まじい。
ていうか、お前。撫でてやった恩はどこにやった。
「ほらほら、取り敢えず靴脱がせてね。可愛い目しても無駄無駄ー」
「ちっ」
あ、この子舌打ちしやがった。
「おい、奈々」
優羽が一言言う前に我が家のお母さん(的ポジション)から声がかかる。
「何よ!」
私、イライラしてるんです!ということを全力で知らしめてる返事だ。
あーあー、と優羽は呆れる。
流(ながれ)にそんな口を聞いたらただではすまないってことを分かっているはずなのに、奈々は学ぶつもりがないのだろうか。
「行儀悪い奴は飯抜き」
「んな゙っ」
ほら飯抜きの刑に処された。