こんな能力(ちから)なんていらなかった
流が優羽の目を見なくなった日から、優羽は一度も寝れていなかった。
寝ようと思うと、夢を見る。
優羽の体は何故か宙にあって、必死に目の前に立つ女に手を伸ばす。が、その腕は届かず優羽は暗闇の底に落ちる。
昔から繰り返し見てきた夢。
この夢を見る度に流が優しく抱きしめてくれた。大丈夫だから、と安心させてくれた。
優しくて、大事な人。
なのに、その大事な存在を自分から遠ざけた。
そのことを責めるかのように、毎日、毎日繰り返しその夢を見る。
恐ろしくて、眠れなくて、誰かに助けを求めたかった。
けれど、求めることなんて出来なくて。
何故なら、自分から流を遠ざけてしまったのだから。
あの温もりを、優しさを求める資格なんて自分にはない。
そんなの理解してる。
なのに、一人では怖くてやっぱり眠ることなんて出来そうになくて。
ベッドの中で目を開けたまま朝を迎える。
そんな日々がもう一週間以上過ぎた。
その間一睡もできていない。
うたた寝をしていても、その女は必ず現れる。
そして毎回必ず『死んで』と笑いながら優羽の体を突き落とす。
飽きもせずに毎回毎回。