こんな能力(ちから)なんていらなかった
慣れるかと思った。
だが、慣れることはなかった。
毎日、それは苦しめる。
今の自分に出来ることは何でもないふりをして、少しでも流の手を煩わせないようにすること。
こんな状態なのに家事を全て流に任せるのは心苦しくて、料理と食器洗い、洗濯は自分でするようになっていた。
一人朝早く起きて、食事を作り、弁当を作り、誰もいない食卓でご飯を食べて学校に行く。
早く帰りたくなかったから、仕事と言い訳して夜遅くに帰宅する。ご飯はいらないと伝えてあるから、ない。
流の手を煩わせないと言いつつ結局は流に会いたくなかった。
流のあの時の顔を見たくないがために、流を避けるような生活を送っていた。
「慣れる時って来るのかな……」
授業中、外を見ながらポツリと呟く。
ガラスに映った自分の姿は本当に酷いものだった。
どうしたらそんな隈になるのかと思うほど濃い隈が目の下に居座っている。少しだけ頬もこけたような気がする。
これじゃあ確かに心配するよね……。
優羽は静かにガラスの中の自分から目を逸らした。