こんな能力(ちから)なんていらなかった







 放課後葵が喫茶店に寄らないかと誘ってくれたため、優羽と葵はあのレトロチックなお店に来ていた。

 考えたら前回ここのケーキを味わえていなかったので、その誘いには一も二もなく乗った。


「これ美味しいよ?」


 葵から差し出されたケーキを頬張ると優羽は満面の笑みを浮かべた。


「美味し〜!」


 葵は良かったと笑った。
 その顔にキュンとする。

 それと同時に前にこの店で起きたことを思い出す。


「……ねぇ、ここに来てもよかったの?」


 仁緒はこの店で葵に暴言を吐いた。
 決していい印象ではないだろうし、寧ろ思い出したくないようなことに思える。
 言ってみればここで葵は友達(?)の一人を無くしたようなものだ。

 そんな優羽の心配もよそに、葵はけろっとした表情でケーキを食べ進めていた。


「特に問題ないよ。私元々仁緒のこと大嫌いだったし、大嫌いな奴が史上最悪な奴になっただけだから」

「そ、そうなの……?」


 会話は最悪なものだったけれど、案外話慣れた様子だったのは気のせいだったのだろうか?


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