こんな能力(ちから)なんていらなかった


「優羽は意外と意気地なしよね……」


 弁解の余地もありません。


「訊いてみればいいのに。そんな風に悶々としてるぐらいならね」


 ごもっともな意見に優羽は詰まる。


「答えを知るだけでもスッキリするものよ?」

「……うん」


 葵は煮え切らない優羽に対して困ったような顔をする。


「——訊かないのなら私が勝手に答えるわよ」

「それだけはやめてっ!?」

「冗談よ」


 葵は二つ目のケーキにフォークを入れた。


 ミルフィーユなんて食べるのかなり難しいのだが、葵の手にかかればあっという間に、しかも、上品に片付けられていく。

 眺めているうちに心は決まった。


——仕方ない。


覚悟を決めよう。



 スーハーと深呼吸を三回する。
 心の中でよし。と呟いた優羽は意を決して口を開いた。


「に「そこまでされるとなんか嫌だなぁ」


 優羽は被せた葵を睨む。


あんなに勇気を振り絞ったのに……!!


 葵は悪びれずに優羽を眺めている。
 早く言ったら?とでも言うように。

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