こんな能力(ちから)なんていらなかった
——もう儘よ!
やけくそになったら簡単だった。
「仁緒は紫音と付き合ってるの!?」
と訊くのは。
葵はフォークを起きながら「訊くの時間かけすぎよ」とボヤいた。
あんたが悪い部分もあったと思いますけども。
その一言を飲み込む。
今機嫌を損ねたら、折角訊いた答えを貰えないという事態にもなりかねない。
黙って葵の沙汰を待つ。
優羽が見つめる中で静かに葵は口を開いた。
その動きがちがうわよ、と答えていた。
「仁緒と紫音は付き合ってないわ」
「……ほんと!?」
ぱあぁぁと優羽の顔は一気に明るくなる。
けれど、そんな優羽を葵は叩きのめす。
「ただし、関係上は婚約者、だけどね」
「…………」
……なんて、ジョブが上手いんだ。
縋るような目を向けるも葵は頬杖をついて本当よと呟いて振り払う。
尚も縋ろうとした。しかし葵の顔を見た瞬間優羽は動きを止めた。
葵の顔は、少し、いや、かなり怖い。