こんな能力(ちから)なんていらなかった


「あるとすれば嫌悪感だけね。紫音も仁緒に関しては腑煮え繰り返るようなことが昔にあったから」

「……そうなの?」


 今度聞いてみればいいわよ、と葵はボヤいた。


「私もその時から仁緒が大嫌い」

「そ……そう?」


 葵がここまで負の感情を露わにしたことがなかったから、優羽はビクビクする。


「最近はなんとかその関係を破棄しようとしてるみたいよ?仁緒側が厄介らしいけどね……」

「てか……まずなんで婚約者なんてもんが高校生の時点でいるの?」


 漫画とか小説の中でしか見たことがない。しかもそういう設定は大体御曹子とかご令嬢とか——

 そこまで考えてから優羽は目を見開いて葵を見る。


「優羽は知らなかった?」

「ま、さか……っ!」




——ブラックカード

——華桜院の制服

——高価な時計

——漂う気品


 少し考えてみれば分かることだった。

 寧ろ何故、今迄思い当たらなかったのか——

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