こんな能力(ちから)なんていらなかった
「……ぁ」
葵は笑顔だった。
だから、額に浮かんだ怒りマークが妙に怖かった。
「じゃあ……」
怒れる葵様の言葉に優羽はゴクリと唾を飲む。
「優羽は私とも一緒にいられないってわけね?」
無言で葵のことを見つめる中、葵はニッコリ笑った。
私は葵と一緒にいられない——?
ゆっくりとその科白を咀嚼する。
「…………へ、あ……え!?」
「自分で言うのもなんだけど、私ホテル白鷹の社長の娘よ」
「ええ!!?」
ホテル白鷹と言えば、超高級ホテルだ。
格式が高いそこは、政治家やら大企業やらがよくパーティを行う場所だ。優羽なんて足を踏み入れたことすらない。
「そんな私とも優羽はいられないのよね?」
「めめめめめ滅相も、ありません!」
そんな反応を返す優羽に葵は怒りマークを消してふうっと頬杖をついた。
頬がぶにゅっとなってるのが可愛い。
「紫音も私も肩書きはすごいけれど、優羽と何も変わらないの。だから敬遠なんかしないで。そんな反応されたら逆に寂しい」
「…………わかった」
強張っていた肩から力を抜く。