こんな能力(ちから)なんていらなかった


「なによ……」

「感情に忠実な奴はいいよな」


 流は呆れたように呟く。


「何よ、それ!?」


 馬鹿にしているのか。

 しかし流はそれ以上一切語らずにさっさと部屋の中に戻った。


「心配なくせに……!!」


 奈々は奥歯を強く噛みしめると、踵を返した。










 優羽は部屋に戻ると電気のスイッチに手を伸ばす。

 パチリと音がした後、部屋は明るくなった。


 ベッドに持っていた救急箱を放り投げると、くらりと目眩が襲う。


 乱暴に制服を脱ぎ捨てるとベッドに倒れこむ。

 その時、腕がズキンと痛んだ。


「くぅ……」


 顔が苦痛で歪む。


 今日は月一回のお掃除の日だった。
 溜まりに溜まった雑妖を纏めて調伏する日。
 それが今日。

 相手は雑魚という油断がこの怪我を招いた。

 一匹一匹は大したことないのだが、何分数が多い。かなりの重労働になる。
 これはしなくてもいいのだが、した方が日々の生活が楽ということで自主的にしていることだった。

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