こんな能力(ちから)なんていらなかった
そして流はそれに無理矢理同行した。
迷惑かけたくないから、と眉を垂らす優羽に悪夢を見た時どうするのか、訊ねたら押し黙った。
そして優羽は申し訳なさそうにお願いしますと申し出た。
だが、本当はお願いするべきは自分の方だと知っていた。
これは自分の我儘だ。
もう少しだけ、優羽を自分だけのものだと錯覚していたかった。
優羽を抱き締めて、優羽が自分の腕の中で静かに眠っている——
その時だけは優羽は自分のものなのだと。
優羽は自分を求めているのだと。
思い込むことができた。
それは錯覚でしかない。
しかし今はその夢を奪われたくはなかった。
自分を優羽が求めているという夢を見たいがための願いだった。
そして、今、時が来ただけだ。
あの男が優羽のオウジサマだということは一目で分かった。
黒髪でも黒い羽を持ってるわけでもない。
だが、男は普通の人間じゃなかった。
——魂が輝いている
あの男を見た感想は優羽と初めて会った時に感じたものと同じだった。
二人は同種だったのだ。
優羽を抱くその姿は、完璧だった。
二人が寄り添う姿はそうあるべき姿であり、逆に二人が離れていることに違和感を感じた。