こんな能力(ちから)なんていらなかった
答えはない。
そう分かっているから口に出した。
はずだった。
「……そんなことない」
流は目を見開く。
寝ていると思っていた優羽は目を開け、流の姿をはっきりと捉えていた。
流は咄嗟に優羽の前から立ち去ろうとする。
が、優羽はその腕を素早く捕らえていた。
「……俺はいないほうがいい」
「そんなことない……」
「何故そんなことが言えるっ……!」
流は声を荒げた。
病人の前で、しかも好きな人間の前でこんなことをすべきではない。
分かってる。
そんなこと分かっている。
全て理解している。
だが、自分の口は止まらなかった。
「お前だって、俺を違う、と言って突き放した……いらないだろ、偽物などっ!」
ニセモノ——
そうだ。
自分はニセモノなんだ。
流はそのことをずっと認めたくなかった。