こんな能力(ちから)なんていらなかった




 だが、もう。


 認めるしかなかった。



——オレはオウジサマの身代わりだってことを——



「俺は、お前の求めてる奴なんかじゃない……夢を見たら、あの男に慰めてもらえばいいだろう?」

「……あの、男?」

「前に、慰めてもらっただろ……この部屋にあの男の匂いが残ってる」


 優羽は眉を垂らす。

 それが肯定の証だと優羽は気が付いていない。

 そしてその肯定がどれだけ流を傷つけているのかも。


「偽物は晴れてお役御免ってことだ、……早めにいなくなるから、もう少し我慢しろ」


 流はそのまま部屋を出ようとする。

 もう、優羽に関する何もかもが辛い。


 これ以上、優羽を感じるもののそばにいられなかった。


 でないと、今にもその甘い体を貪り、蹂躙し、穢してしまう。

 病人にも欲情する自分の欲に吐気がこみ上げる。


 そして、同時に自分の醜さに安堵を覚える。

 こんな状態じゃ優羽のそばにいられない。



 だから、離れる。



 それだけが今自分に出来る精一杯の優羽を想った行動であり、そばにいられない理由があることに安堵していた。





 なのに。

 優羽はそれを許さなかった。

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