こんな能力(ちから)なんていらなかった
「……な、え、は?ええ?」
「優羽はいつも自分の子供のように思ってた、愛しい我が子のように、……だから、いつでも頼れ」
「こ、子供……?」
自己犠牲の愛。
その愛は、自分の望みが全て叶うわけではない。
が、これだけが今の自分にできる精一杯で、最大の愛の形だった。
言いながら優羽の顎を掴んで上を向かせる。
本当はこの美味しそうな唇にかぶりつきたい。
強引に開かせて、舌を絡めて、可愛い声を聞きたい。
だが、それは自分の役目ではないともう十分なほど思い知った。
「それだけ覚えといて」
チュッと優羽の額に吸い付く。
真っ赤な顔で額を押さえたまま惚けている優羽にお粥を食べるよう告げると、すぐに部屋を出た。
ドアを閉めた途端そのドアの向こうから混乱したような絶叫が聞こえてくる。
流はその声を聞きながら笑う。
ずっと自分の中で燻っていた気持ちを、例え嘘の形だとしても、吐き出せたからか、体が軽くなった気がした。
今なら自分のこの羽でどこまでもいける。そんな気が。
「——おっそいのよ」
振り向けば奈々が壁に寄っかかってそこにいた。