こんな能力(ちから)なんていらなかった




「何で俺のことを、呼ばねぇんだよ!!!」



なんでこんな顔で私のことを見ているの?



心配そうで。
不安そうで。


まるで、流みたいな。

家族みたいな。

好きな人を見ているかのような。



切なそうな顔で。



 紫音はそっと優羽から身体を離す。
 しかし腰に回した腕はそのままで、目線を合わせるように少しかがんだ。


「また……あの夢を見てるのか……?」

「……」


 黙ったままの優羽の涙袋を撫でる。


「こんなにするまで寝てないのかよ……」

「……」

「何か言えよ……!」


 紫音は悲痛そうに顔を歪めて叫んだ。



なんで。

なんで。

なんで。



 頭の中は疑問符で一杯だ。

 だから、つい心にもないことを言ってしまった。

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