こんな能力(ちから)なんていらなかった
華奢だと思っていたのに、程よい筋肉のついた身体を目の当たりにして優羽はゴクリと唾を飲む。
なんって、
色っぽい身体なんだ————
惚ける優羽を他所に紫音は何かを首から外してボタンを止めて行く。
そして最初までとは行かないがある程度着崩して優羽に身体を向けた。
今迄キッチリした制服姿しか見たことがなかったが、着崩した紫音には妙な色気がある。
「こっちこい」
「う……うん」
優羽は熱に浮かされたように、言われたままに紫音の元へとゆく。
紫音は優羽の腕を掴むと後ろを向かせて紫音の前に立たせた。
その手が優羽の首元をさらっと撫でる。
ひんやりとした手に優羽はピクッと身体を震わせる。
そして紫音は優羽の首に何かをかけた。
優羽は首元にあるそれを手にとって眺めた。
「シルバー……の指輪?」
「そう」
複雑な紋様を施されたそれは繊細で、あっという間に壊れてしまいそうな儚さを持っていた。
優羽はふっと紫音と同じベッドで眠った時のことを考える。
その時見えたシルバーのリング。
それがこれなんじゃ——?