こんな能力(ちから)なんていらなかった
奈々の鈴の音に見送られながら優羽はリビングを出た。
素直に部屋に行き、制服を脱ぎ散らかしてベッドに潜る。
「ふぅー」
優羽は長く息を吐き出すとゴロンと寝返りを打つ。
優羽は流の想いに応えられないことに申し訳なく感じていた。
私のせいで。そんな気持ちがあった。
けれど、それは間違いだったのだと思う。
本当に優羽の為を思って近くにいるというのだったなら、優羽は流を京都に追い返していただろう。
だが、流は本気でここにいたいからいるのだ。その流の気持ちにとやかく言うべきではないのだ。
流の気持ちは優羽のものではないのだから。
今まで何処かに引っかかっていた流の気持ちが、さぁっと溶けていった。
***
「昨日ずっと寝てただけで……そこまで回復できるものなの?」
「……若さじゃない?」
学校に一日ぶりに行くと葵が呆れた顔で出迎えてくれた。
「でもスッキリしたいい顔になったわね」
放課後、鞄を持った葵にそう言われる。
今日は一日中忙しくて葵ときちんと話すのはこれが最初だ。
「久々にちゃんと寝たからねー。昨日何もご飯食べてないよ……」
「ということは、本当に丸一日眠ってたってこと?」
優羽はビックリした顔で葵を見る。
なんで……と声を上げかけたところで、天使様の存在を思い出す。