こんな能力(ちから)なんていらなかった


「そんなことまで分かっちゃうんだ……」

「この子優羽が大好きみたいで……よく勝手に出歩いてて……」

「放し飼いの犬かっ!」


 言い聞かせてはいるのだけれど、言うこと聞いてくれなくて……。と葵は溜め息をもらした。


「まぁ、よくわからんものだし仕方ないかぁ……」


 靴を履き替えながらそう呟くと葵はあんま気にしないで。と笑った。


「下着の色とかは聞いてないから」

「とかって何!?……他には何か知ってる口ぶりだよね!?」


 まさかすぎる発言に身を乗り出した優羽に対して、葵は至って普通で落ち着いていた。


「寝てる時は裸とか……?」

「うぉいっ!?」

「あと、奈々ちゃんが優羽のトレーナーを枕にしてたって」

「なに!?」


 毛だらけになるからそれだけはすんなって言っておいてあるのに……!!

 帰ったらすることリストの一番上に“制裁”を据える。


「スリーサイズとかは聞いてないから安心してね?」

「アリガトウゴザイマス(棒)」


 笑顔でそんなこと言われても喜べない。

 複雑な気持ちになりながら校門をくぐると葵がふらっと駅とは反対側に曲がった。

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