こんな能力(ちから)なんていらなかった
「葵?」
「あっ、今日はこっちなの」
「そうなの?」
葵は週に何度か迎えが来る。
葵を迎えに来る車は、黒塗りのイカニモな車だった。
傷一つつけようものなら、借金まみれになることは確実、そんな車に送り迎えされる葵は本当にお嬢様なんだなーと実感する(立ち居振る舞いや言葉遣いからも実感はできるのだが)。
聞けば白鷹の家は昔華族だったらしく、話に聞けば天皇にも関わりのあった凄い家系らしい。
葵はたまに財界のパーティにも出席しているようだし。
本当になんでこんな庶民と一緒にいるのか……知れば知るほど不思議に思う。
葵が気にしないから自分も気にしないと決めてはいるのだが。
優羽は校門で葵に手を振る。
葵も笑顔で控えめに振り返す。
そして駐まっていた車に乗り込んだのを見送ると優羽は歩き出した。
優羽はゆっくり歩きながら、いつもと違う道に首を傾げる。
今日は同じ制服が少ないのだ。
しかも極端に少ない。いつもならわらわらといるはずの時間だ。
学校を出た時間はいつもと変わらないはずなのだが、不思議なこともあるもんだと優羽は頭を掻いた。
そんな中で優羽は一人の人間に目が留まった。
ここらでは見ない制服の男。学ランだ。