こんな能力(ちから)なんていらなかった


「おはよ〜」


 大きな欠伸をしながら、リビングに行くと今日は珍しく奈々がいなかった。

 代わりに机の上に大衆新聞。

 いつもは優羽が取りに行くそれがあるということは、奈々は久方振りのお仕事に行ったようだ。


 新聞を開いて見てみれば、そこには予想通り、死刑執行の文字が。


「てことはこの人、地獄行き決定か……」


 優羽はしみじみとした口調で言うと新聞を机の上に戻した。

 そのタイミングで流が皿を持ってやってくる。


「今日はなー……に、ん?」


 皿の上を見た途端、優羽の明るかった顔が見る見る間に真顔へとなる。


「……朝から秋刀魚? ガッツリだね」


 秋刀魚の乗った皿を持つ流の表情も冴えない。


「奈々の要望?」

「ああ。 どうせすぐ帰ってくるつって聞かないもんだから……」


あの我儘ちゃんめ。


「でも、何でそんな落ち込んでんの?」

「今日の晩飯それにするつもりだったんだよ……」

「……なるほど」


ほんとにあの我儘め!


 ここにいない奈々に対して二人して顔を顰める。


「まぁ、まだ若いしな……」

「私の数百倍歳食ってても?」

「…………わすれてた」


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