こんな能力(ちから)なんていらなかった


『どこでその方を……!?』

「偉い人なの?」


 紫音の改まった言い方に優羽は眉根を寄せる。


『えっ!? あっ……いや』


 紫音がここまで慌てるなんて珍しい。


「結局なに?」

『偉いっていうか、何というか、そっ、そう畏れ多い方で!』


 紫音がこんな反応を返すなんてよっぽどの権力者だったりするのだろうか。
 

 もしそうならば。

 紫音ですらも恐れるような、そんな権力者がangelicに味方してるってことになる。


『とにかく、いいや、もし今度またangelicに会ったらすぐ呼べ!……本当は今すぐ行きたいところだが、今は生憎外に出られない』

「そんな忙しいなら、迷惑じゃ……」

『今は抜けられないだけだ、最近はそこまで忙しくない』

「そうなの……?」

『ああ、とにかく呼べよ?絶対だからな!?』

「分かった……」


 言うが早いか切れる通話。


かなり焦っているような声だったなー。


 しげしげと携帯を見つめながら思う。


 というか。

 見たら呼べと紫音は言うが電話をかけてられる余裕などその時にあるのだろうか……。


 ないとしか思えない。

 安易に約束をしてしまったことに優羽はまいったな。と呟く。

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