こんな能力(ちから)なんていらなかった
優羽はその時になってようやく現在の時刻に気が付いた。
「ご飯出来たの?」
「ああ」
流の生活リズムの正確さに優羽はいつもスゴイと真面目に思う。
実際流と暮らす中で夕食が六時からずれたことがない。
「——で?」
「それは成果を聞いてるの?」
部屋から出た優羽は首を横に振った。
「全然ダメ。見つかんない」
「フィリアムだろ……?日本人ではないもんなぁ」
「その名前は何人か見つかったんだけど、紫音と何かしら関係ありそうな人がいない」
「うーん……これだけはどうしようもなぁ……手伝えなくて悪いな」
「わかってるよ、大丈夫だから、ね?」
申し訳なさそうな流に優羽は顔の前で手を振った。
フィリアム——これが一体何者なのか知りたくて、優羽はクラッキングをしていた。
本来なら違法行為にあたるこれは、家族も知らない。言うならば趣味のようなものだ。勿論、こういう時しかしないけれど。
世界中のデータを覗いてみたが、ピンと来る人物は一人もいなかった。
紫音に問い詰める前に知っておけることは知っておきたかったのだが、やっぱり聞くしかないようだ。