こんな能力(ちから)なんていらなかった
痛みで顔を顰める優羽にその男は嗤った。
「ははっ……か弱いものだな。これなら、一度ぐらい襲っておけばよかった——」
言っている意味が分からない。
「いや——今からでも遅くないか?」
嫌な笑みを湛えたその口元に背筋がゾッとした。
「離してっ!」
千秋を空いていた左腕でとろうとするが、手が届く前に優羽の腕は男に捕らえられ、塀に押し付けられる。
「離せって言ってんでしょ!」
足を振り上げようとしても、男は素早く優羽の足の間に自分の足を差し入れ身動きできないようにする。
「暴れないでくださいませんかねぇ?」
男はゆっくりと顔を近付けてくる。
気持ちの悪い顔がゆっくりと。
自分の口に向かって。
「やめろって言ってんの!!」
優羽は男の顔面めがけて頭を振った。
ゴスッと痛そうな音の後、男の腕から力が抜けた。
チャンスとばかりに優羽は駆け出す。
が、一歩も行かないところで優羽は地面に引きずり倒された。
「いった……!」
呻いた時に自分の身体にその男が跨った。
「大人しくヤられてればいいものを……貴女が自ら選んだのですからね?」