こんな能力(ちから)なんていらなかった



忙しい時に電話したとか……?


 だが、いつでも電話してこいって言ったのは紫音だ。

 それに優羽の胸元を見てからだ。
 紫音の態度が変わったのは。


 どうして紫音が怒っているのか分からないまま、よろよろと立ち上がると紫音のジャケットを脱ぐ。

 中に着ていたティシャツはボロボロでもう二度と着れないことだけは分かった。
 だって襟口からブラどころかおへそまで見えてる。
 こんなのを着て出歩いたら痴女決定だ。

 そのティシャツも脱いで鏡を見た時、優羽は小さく声を上げた。


 赤くなっている。
 谷間の真ん中が。


 優羽は食い入るようにそこを見つめるとゴシリとこすった。
 だが、その跡は消えない。

 何度も何度もこする。

 けれど消えない。


————汚い。
 
この跡は自分を汚染している。


 縛然と思った。


その汚れを紫音は嫌ったんだ。

だから怒ったんだ。


 優羽はそう思うと、徐に強くこすり始めた。
 しかし、それでもその跡は消えない。


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