こんな能力(ちから)なんていらなかった



 未だに友達のいない優羽には無縁な話だ。


 優羽がこの学校に転校したのは夏休みが始まってすぐ。
 幸か不幸か丁度学園祭が終わった数日後だった。

 お友達グループもとうにできており。
 お祭りに一致団結したばかりのクラスに馴染めるはずもなく、ぼっちのまま今に至る。

 なんとも切ない話だ。

 自分で自分にホロリとしてしまう。


 なんていう冗談は置いといて。


 窓の外を眺める。


——まただ。


 昨日と同じ、嫌な気配が流れてる。


 本来は今すぐそこに向かわなければいけないのだが——


 硝子に写る時計に目をやるとそれはまだ九時過ぎを指している。

 そりゃそうだ。
 だって、今はまだ一時限目なのだから。学校が始まって三十分と経ってない。


 流石に今から早退するのは、考えてしまう。
 今日はみっちり七時間授業がある日だ。

 テスト返しのため実質的な授業は殆ど無いとは言え、出席日数に後々響く可能性がある。それが赤点に繋がることになるかもしれない。これから先も早退する事態は大いに起こり得るのだから。


さぁて、どうしようか……。


 先生の解説を聞き流しながら物思いに耽る。


 色々な手を考えるが結局最後の手を使うしかないようだ。


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