こんな能力(ちから)なんていらなかった
「優羽とフィリアム様が瓜二つって言っただろ?」
「そんなこと言ってた?」
「…………」
「突然現れて、開口一番言った唯斗が悪い」
さっきから思っていたが紫音は唯斗に辛辣だ。
床に座り込んで拗ねていた唯斗はうるせぇ!!と叫びながら立ち上がった。
「とにかく、だ」
唯斗が優羽の肩に手を置く。
先の読めない唯斗の一挙一動に優羽は小さく反応する。そんなことは気にせずに唯斗は優羽の目を見ていた。
「……用心しろよ優羽」
「え……?」
「下手したら殺されかねない。これからは常に一人になるな。もしどうしても一人になる時は俺か紫音を呼べ。俺らなら一瞬で行けるからな」
つまり、angelicはフィリアム様とやらと優羽を同一人物と思っているらしかった。
それイコール、フィリアム様の代わりに自分の命が狙われるってことだ。
呆然と目の前の男の顔を見る。
嘘でしょ、と聞き返せるような雰囲気じゃない。本当なんだ。
「そんなに……私とフィリアム様って似てる……?」
「俺等も最初間違えたほどだ」
側近だったらしい紫音が言うのだから間違いではないのだろう。