こんな能力(ちから)なんていらなかった


 そこにフワリと降り立ったのは、流で、元の姿特有の赤く染まった瞳が優羽を捉えると抱きしめられた。


「電話は繋がらないし、心配したぞ……」

「ごめんなさい」


 素直に謝ると流は優羽を離した。

 そして優羽の後ろに立っていた紫音を見つけると何があった?と尋ねた。


「帰る途中に気を失った優羽を見つけて、さっきまで介抱していました」

「ッ……迷惑をかけたな」

「いえ、こちらこそ配慮が足らず申し訳ございません」


 紫音が頭をあげたタイミングでコンコンとノックの音が聞こえた。


「入れ」

『失礼します』


 するとドアが静かに開いて、一人の男が入ってきた。

 そして目が合ったと思った瞬間。


「〜〜〜〜〜っ!!!!」


 その男の目から大量の水が溢れ出した。


「優羽様!!!!」


 ビックリしたまま固まっている優羽の元にその得体の知れない男は駆け寄り手を取ると、物凄い勢いで膝をついた。

 かなり痛そうな音に優羽の意識も戻ってくる。


「だっ、大丈夫ですか……?」

「それはわたくしの台詞でございます!!!」


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