こんな能力(ちから)なんていらなかった
「送りましょうか?」
優羽と晃の会話が途切れたのを見計らって紫音が申し出る。
流はそれを身振りで制した。
「お気遣い感謝するが、このまま帰らせて貰おう。優羽を助けてくれてありがとう」
「大切なので」
紫音は優羽の耳に顔を寄せると、
「約束忘れるなよ」
とだけ言って顔を離した。
優羽はコクリと頷く。
「じゃあまた……」
一歩後ろに下がろうとした紫音の腕を咄嗟に掴む。
紫音は驚いたが、構わない。
優羽にはどうしても聞きたいことがあったのだ。
「王様には……」
「王様?」
「会えたの————?」
紫音が王様を好きなのだと気が付いてからずっと聞きたかったこと。
自分と同じ顔の人は今どこにいるのか。
紫音の近くにいるのか。
それともまだ会えていないのか。
それが知りたかった。
紫音が目を見開く。
そして一瞬口を開けてすぐに閉じた。
そして今度は微笑んでから首を振った。