こんな能力(ちから)なんていらなかった


 笑ってるつもりだろうけど、笑えてない。


 目が泣きそうだった。


「ごめん、変なこと聞いて……」

「気にするな」



 なんとも言えない空気が流れそうになったので、優羽は手をばっとあげた。


「じゃあね!」

「……またな」


 紫音がそっと微笑むと流は優羽のことを抱き上げ、黒の世界に飛び込んだ。

 バサリと音を立てて広がった黒い翼は紫音を思い出させる。


 あの質問に紫音はこちらまで泣きたくなるぐらい切ない目をした。

 きっと会いたいのだろう。

 泣きたいほど会いたいのだろう——



「さっき……何を言われたんだ」

「え!?」


 急に聞かれて吃ってしまう。


「どれの話?」

「別れ際に耳打ちされていただろう?」

「ああ!」


 手鼓を売ってから、ハッとする。


なんて答えよう……。


 さっき紫音はangelicの話を出さなかった。
 それにはきっと意味がある。


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