こんな能力(ちから)なんていらなかった
若干口の悪いこの男、唯斗は話すとかなり気さくなやつで、あっという間に軽口を叩き合う仲になった。
「こんな早い時間に歩いてるってことは、優羽のとこも期末?」
「そー。でも今日が最終日だったからもう終わり〜」
「俺らも一緒〜」
忌々しい期末が終わりを迎えたら、あとは授業も特にない。
華桜院もきっとそうだろう。
「……丁度よかった」
唯斗との会話を聞いていた紫音がそんなことを言う。
「何が?」
紫音は笑うと、来週の二十五日って空いてる?と訊いた。
「それって……」
「水族館行かないか?特別展示やるんだって」
「行くっ!!」
「じゃあ、空けとけよ」
即答した優羽に紫音はククッ……と笑う。
「わかりやすーい」
唯斗が後ろから紫音には聞こえないような声量でボソッと言う。
優羽は唯斗を一瞥するとその足を思い切り踏んだ。
「いって!!!」
「唯斗うるさい」
「踏んだくせにその態度か!?」
「唯斗、五月蠅いよ」
「唯斗様……少々声のトーンをお下げください」
「晃まで!?」
ひっでーと言う唯斗はそんなこと思ってない。だって顔が笑ってる。