こんな能力(ちから)なんていらなかった



 けれど心の底から喜べない自分がいる。

 理由は分かり切ってる。


 自分は王様の身代わりだからだ。


「優しさって……」



——なんて残酷なんだろう



 誰にも聞こえない声で言うと優羽はその場から踵を返した。




***




 教室に入ってすぐに、優羽は今日何度目かになる“マジでだるい”を耳にした。


「ほんとだーるーいー!!」

「なんで今日が終業式なんだろう……」

「ほんとあり得ないよね!!」

「イブとか、国民の休日にしてよー!!」


 そうです。

 ストーブの前に屯する四人組の会話から分かるように今日が終業式。
 そして十二月二十四日——クリスマスイブだ。


 リア充共は同じような会話しかしていない。


「と言ってもあんた彼氏いないじゃーん」

「うるさいっ!!あんたもでしょ!」

「言わないでよー!!」


 前言撤回。

 リア充も非リアも皆して同じことを言っている。

 結局は皆文句を言いたいだけか。

 優羽はバタンと机に伏せると顔だけ窓の外に向けた。


明日かー……。


 先々週、紫音と約束してからすぐにデートの準備した。

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