こんな能力(ちから)なんていらなかった
——————ズズズズズ……
「っ!?」
教室が大きく揺らぐ。
机が動き、教卓が倒れた。
立っていた生徒は激しい揺れに立っていられず、尻餅をつく。
目の前で体制を崩した葵に優羽は咄嗟に手を伸ばし、力強く引き寄せる。
そして葵の身体を庇うようにして床に座り込んだ。
女子が悲鳴を上げる中で誰か男子が叫んだ。
「——地震だ!!」
叫び声と同時にアナウンスが入る。
机の下に入る、窓を開けておく、など注意事項が読み上げられるが、読み終わる前に揺れは止まった。
アナウンスが終わると同時に優羽は葵から手を離して立ち上がった。
結構揺れたため、誰かが倒れて頭を打っていてもおかしくはない。
その確認のために教室を見回した優羽は、
教壇を見て絶句した。
「お待たせいたしましたフィリアム様」
そこにいたのはあの男。
紫音をアラウディと呼んだあの男。
他に見たことのない男が七人。