こんな能力(ちから)なんていらなかった
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かしゃん——
書斎にいた流は偶然聞こえた小さな音に反応し顔をあげた。
それは隣の部屋、リビングから聞こえた。
流は溜息を付き立ち上がろうと文机に手をつく。だが、その背中に強い圧迫感を感じ振り、勢い良く振り向いた。
今、何かが起きた——
流が立ち上がるのと同時に襖が開き、奈々が飛び込んできた。
「流っ!」
「分かっている!」
部屋の窓を開け外に出ると一羽の烏が直様流の肩目掛けて降りてきた。
そして沈黙が流れる。
「……そうか」
一言呟いた流は烏を空に放る。
「奈々、行くぞ」
「どこに?」
「優羽の学校だ」
「!」
流は変化を解いて、烏の黒い羽を生やすと奈々を抱き上げ飛んだ。
一気に空高く舞い上がると、流は翼をバサリと広げる。
すると烏がどこからともなく飛んできて、二人を囲み出す。どこにいたのか、と思うほどの多さだ。
ギャアギャアと鳴く烏の大群は住民の足を止め、空を見上げた人間は天変地異の前触れかと不気味がった。
「早く!」
「ああ」
二人が飛び去ると、烏の群れも二人の後をついて行くように飛んで行った。