こんな能力(ちから)なんていらなかった
奈々は気持ち良さそうに目を細めた。
「……化け猫か?」
男が化け猫かと聞いた瞬間奈々は振り向いた。
「あんたみたいな若造にそんな口聞かれるような歳じゃないんだけど?」
奈々ははっと鼻で笑う。
奈々のバカにした態度に男の眉が動いた。
「……私の方が数倍長く生きていると思うのだが?」
「あんたが?四千も六千も生きてきたって言うの?」
「……!?」
奈々は子供から大人の姿へと像を変える。
妖艶さを湛えた奈々は男を横目で見る。
たったそれだけの動作なのにすごく色っぽい。
「若造が。あんたなんかと年季が違うんだよ」
奈々は優羽に向き直るとニヤリと怪しい笑みを浮かべた。
たったそれだけなのになんで頼もしく見えるんだろう。
「優羽、命令は?」
「——クラスメイトの保護及び、安全の確保!」
「りょーかい」
奈々は再び猫の姿に戻る。
しかし今までと違う。
天井に頭が届きそうなほど大きくなった奈々はニャアと一声鳴く。
その声は可愛らしいなんてものではなく、クラスメイトをビビらせる程迫力ある声だった。