こんな能力(ちから)なんていらなかった
「皆!」
阿鼻叫喚となりかけた教室の後方に向けて優羽は鋭い声を発する。
「とにかく教室から出て!その猫がみんなを守ってくれるから!!」
「……え、で、でもっ……!」
流石にこんな得体のしれない巨大な猫に進んで着いていく人はいなかった。
しかし、それではこちらが困る。
成り行きを見守っていた奈々はふぅっと息を吐き出すと、やれやれと近くに座り込んでいた女子を口に咥えた。
「いやああああぁぁぁぁ!」
周りの女子が叫び声を上げる。もうパニックだ。
こんな巨大な猫に咥えられたら誰でもこんな風になるだろう。
奈々は煩わしそうに眉を寄せるとその子を背中に乗せ、腰が抜けてる子を優先的に次から次へと背中に乗せていく。
「いいから、来なさい。じゃないと死ぬわよ」
死ぬという言葉はかなりの効果があった。
先程優羽に起きたことを見ていれば否が応でも、このあり得ない状況を信じるしかない。
クラスメイト達は一斉に教室から出た。
ガランとなった教室で優羽は一人男達の前に佇む。
結界は完成してしまった。
その結界を壊す術を優羽は知らない。
男達は完全武装に対し、優羽は何も持っていない状況。