こんな能力(ちから)なんていらなかった


 完璧に詰んでいる。


 だが、奈々が来たことで状況は確実に変わった。
 奈々がいるということは確実に流も来ているはずだ。

 流と奈々には紫音達がangelicであるということを話しておいた。(紫音達と相談した上で)

 私に男達の作った結界は壊せない。
 だが、紫音達なら、壊し方を知っているはずだ。


 流のことだ。何も言わなくても今頃紫音達の元へと向かっていることだろう。


 そして、今自分ができること。

 それは、紫音達が来るまで時間を稼ぐこと。


「折角殺そうと思っていたというのに……」


 心底残念そうな顔をした男に優羽は眉をひそめる。
 しかし、それも一瞬で、直ぐにいつもの顔に戻す。


「ゆっくり話したかったの」

「……まぁいいでしょう。貴女に免じて他の人間は今回は見逃して差し上げます」

「それはよかった」


 優羽はフッと息を吐く。

 とりあえず学校内の人間に危害が加わることはなくなったようだ。


「ですが、我々に話すことはもうありません」

「……そんなこと言わずに聞かせてよ。私はあんたらに対して一体どんな酷いことをしたのか、知らずに死ぬなんて悔い残りすぎ」


 優羽が大げさに溜息つくと、男もそれもそうですねぇ……と納得したのか、呟いた。

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