こんな能力(ちから)なんていらなかった
「分かりました。冥土の土産程度には話してあげましょう」
優羽は内心でガッツポーズを決める。
これで嫌ですなんて言われていたらすぐにGAMEOVERだった。
しかし、希望の光は見えた。
後はどれだけ時間を稼げるか、それだけだ。
「で、結局私あんた達にどんな酷いことをしたの?」
なるべく口調に気をつける。
偉そうに聞こえないように、だが、媚びてるようには聞こえないように。
だが、そんなことは無駄に終わる。
「——!」
一瞬の間に間を詰めた男は優羽の前髪を乱暴に掴んだ。
突然のことすぎて優羽は何の反応も出来ずにそまま床に引きずり倒される。
すかさず立ち上がろうとした優羽は指に力が入らなことに気が付いた。
見れば薄い光が優羽の腕に巻きついている。
足も同様で、この紐らしきものが優羽の身体から自由を奪っているようだった。
「なにす……っ!?」
顔を上げた瞬間、その頭は力付くで床に打ち付けられた。
打ち所が悪かったのか、視界が大きく歪んだ。
「『……誰に向かって、』」
朦朧とする頭で、前を見る。