こんな能力(ちから)なんていらなかった
優羽の横に膝をついて座った男は、優羽の髪を引きながら言った。
「『そんな口を聞いているんだ?』」
男はもう一度優羽の頭を床に打ち付ける。
引いて、打ち付ける。引いて。打ち付けて。引いて。
鈍い音が聞こえなくなった時、優羽の目は虚ろに開いているだけだった。
「『お前に訊ねるという行為は許されていない、そんなことすらも分からないのか?』」
「……分かるわけないでしょ、バッカじゃないの?」
「まだそんな口が聞けるとは……驚きましたよ」
男は優羽の髪から手を放すと脇腹を思い切り蹴り上げた。
「うっ……!」
冷たい床の上で優羽は咳き込んだ。
「先程のセリフは全てかつての貴女が言ったものです。実際に言われてどのようなことを思いましたか?」
「けほっ……どうもこうも、ない」
「随分と偉そうで傲慢ではありませんか?」
「……んなこと言われても」
実際王の方が身分は上なのだから、そう思っても耐えなければいけないのでは——?
それに、こんなことだけで王に反逆なんてするだろうか?
他にもなにかあったとしか思えない。