こんな能力(ちから)なんていらなかった
「少々お待ちくださいって」
晃もそう思ったのだろう。
前のめる流を手で制すと、中断していた説明を再開した。
「この世界には魔法使いや魔術師といった人達がいるのですが、その人達が分けられるのには訳があります」
「……そんなことどうでもいい」
「どの道、今はどうすることもできないのですから聞いておいてください。二つはマナを“強制的に使用できる”か“マナの流れを理解し、使用する”かで分けられます。魔法使いはマナを強制的に使えます。しかし、魔術師は魔法陣や呪文といった、アクセスコードを使わないとマナを使うことはできないのです」
「……何が言いたいのかさっぱり分からん」
流の眉間の皺が段々と深くなっている。晃はそれが分かっていても、話を続ける。
「つまり、術式という“契約書”があれば、その契約を破棄し術を破壊することができます。ですが、私達はどちらかと言えば魔法使い側。術式を使わない結界を、壊す術がないのです」
「……そうなのか?」
「厳密に言えば違います。一人や二人ならどうにか力尽くで打ち消すことはできます。が、少人数ではなく、上位の貴族が十人近くもいるとなると話は違ってきます」
「貴族……?とにかく、どうしようもない、ということなのか?」
二人の反応を見た流は、クソッと吐き捨てると晃に背を向けた。