こんな能力(ちから)なんていらなかった



「あいつは、何をしてるんだ?」

「……待ってるんだよ」


 流が片眉をあげて「何を?」と訊く。

 それに唯斗は「呼ばれるのを」と答えた。


 ますます怪訝そうな顔を流がした瞬間、紫音の肩がピクリと動いた。
 そして、空を仰いで、

——一瞬で姿を消した。


「!?」

「やっとか!」

「やっとってどういうことだ!?」

「だから“呼ばれた”んだよ」

「は!?」

「いいから行くぞ!」


 流が目を見開いて狼狽えているのにも構わず、流の腕を掴んだ唯斗はあきらと共にそのまま屋上から飛び降りた。


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