こんな能力(ちから)なんていらなかった




「お前はな、幼い頃から沢山の男を咥えてきたんだよ!!」


 男の語る真実は、自分が思っていたものとまるで違かった。
 叩きつけられた過去に優羽は、最初の数秒は意味がわからず唖然として、そしてゆっくりと目を見開き言葉を失う。


「てめぇ!!!」


 唯斗がドスの効いた声でアレイスター対して非を叫んだ。

 だが、アレイスターはやめなかった。


「一人どころじゃねぇよ?何十人もだ!」

「う、そ……」

「嘘じゃねぇよ!この穢れたメス豚が!!」

「いや……」



————私はそんな女じゃない!!!



 心の中では反発しているのに、その一言がどうしても言えなかった。



「……やめろ」


 怒りを全身に漲らせた紫音が、アレイスターに向けて一歩踏み出す。
 アレイスターは紫音の方を見ると、ニタリと笑った。


「お前も女王の容姿に惚れて仕えた口だろ? 一回ぐらい手出したことあんじゃねぇの?」


 紫音が息を飲む。
 動きを止めたことに対して、アレイスターは再び笑った。


「図星だろ?」

「……殺してやる」


 紫音が再度、先程持っていたそれを構える。

 紫音が本気なのは容易に分かる。
 だが、それだけは阻止しなければと優羽も動いた。


 しかし、優羽が動くよりも一瞬前に。


 いつの間にか間合いを詰めていた晃が、アレイスターに向けて腕を振りかぶっていた。
 

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