こんな能力(ちから)なんていらなかった
「うん、分かった」
なんとか顔に笑顔を貼り付ける。
そこにいた三人は、皆女王のために怒ったのだ。
優羽のためじゃない。
それを思い知らされて、ほんの少し前に感じた自惚れが恥ずかしくなって、本当は今すぐこの場を走り去りたいくらいだった。
しかし、そんなことすれば三人、いや四人は慌てて後を追ってくるだろう。
それを考えると迷惑にしかならないことはやめた方がいい。
もしかしたら、追ってこないかもしれない。
そんなことを考えたら一瞬自虐的な笑みが浮かんだ。
でも、すぐに取り繕う。
誰か気付いただろうか。
一瞬だけ優羽の笑顔の質が変わったことに。
周りの面々を見てみれば誰も気付いたようには見えなかった。
こっそり安堵の息を吐き出す。
静かに笑う優羽の肩に流が手を置く。
「……どうしたの?」
少し驚いた。
突然のことだったから。
「英明様に連絡入れてくるから、ケータイ貸せ」
はよ、寄越せと言わんばかりの流に優羽は慌てて「しなくていいよ!」と声を上げた。
「いいから」
「いいからって言ったって……」
優羽が戸惑うのも当然だ。
なんたって、流はケータイを使ったことがないのだ。
電気ポットのお湯の出し方に四苦八苦してるような奴に、ケータイを使いこなせるとは到底思えない。